『平成19年度 スキー指導者検定・指導員検定会』レポート

 水野祐さんより2月16日〜18日にホワイトワールド尾瀬岩鞍スキー場で開催されたスキー指導者検定・指導員検定会のレポートが寄稿されました。
検定会場となったホワイトワールド尾瀬岩鞍スキー場のメインバーン
 2007年度のスキー指導者検定・指導員検定会が2月16日〜18日に全国5ヶ所のスキー場で行われました。この指導員検定会に湘南スキークラブからは水野が受検し、無事合格することができました。この指導員検定会に至るまでの過程と検定会当日の様子を報告します。

 準指合格後に十分なほどの研鑚を自分自身に課してきたとの自負もあり、今シーズンのスタート時点では何の迷いも不安も無く検定シーズンに入ることが出来ました。また、指導員研修会の理論研修会と教育本部のオフィシャルブックを熟読し、今年度の研修会テーマや実技検定種目のポイントもシーズンに入る前に十分に理解できていました。そのため、敢えて指導員検定会のための練習は積む必要もないと考えていました。指導員の資格はスキーヤーとして更なる技術の向上を目指す中で結果としてついてくるであろうというスタンスで12月初旬のシーズンインを迎えました。この時点では理論検定の対策もある程度は進んでいたので、一日も早く検定会が来て欲しいと思っていました。
 しかし、12月中旬の指導員養成講習会の実技講習会で左足のアキレス腱部分断裂と脹脛上部肉離れのアクシデントに見舞われ、一転して苦難のシーズン幕開けとなりました。幸いにも1月中旬には脹脛肉離れの痛みはほとんどない状態にまで回復しました。しかし、アキレス腱は力を入れても全く自力で動く気配をみせず、検定会が目前に迫った2月に入っても滑りのバランスを崩していることが誰の目にも明らかだったと思います。左足首の感覚さえ戻れば検定会はどうにかなる!との思いから、ケガをしてからは検定会が一日でも遅くなって欲しいとの考えに変わっていました。
 一方、ケガをしてゲレンデに立つことができなかった時間は理論検定(ペーパーテスト)の対策に当てることができました。スキー教程等の出題範囲とされる書籍を熟読し、模擬問題集やスキー大学からの情報、理論講習会カリキュラムなどを十分に分析しました。ケガの回復状況に対する不安が高まる反面、理論検定に対する自信は日に日に高まってゆきました。このことが、検定会当日の流れを自分に引き寄せる切っ掛けになったのだと思っています。
検定二日目、不整地・小回りの様子
 そして検定会の前週末、2月の三連休に開催された市民スキーで指導員の大先輩であり長年自分の滑りを見てきてもらっていた佐藤さんに体の力を抜くよう諭され、前年までの感覚に近づくことが出来ました。それまで動かない左足首をカバーしようとして他の部分にまで力を入れ、自分本来のバランスを崩していたことに気付きました。また、SAJイグザミナーの金子裕之さんのワンポイントアドバイスで滑りにもキレが戻ってきたようでした。

 悲喜交々の日々を経て、ついに指導員検定会を迎えることになりました。今年度の指導員検定会は雪不足ため、会期直前に第5会場(中国四国会場)が奥神鍋(兵庫県)から大山(鳥取)に変更になりました。また、自分が受検する第3会場(甲信越会場)のホワイトワールド尾瀬岩鞍スキー場では検定会前々日に降った雨が凍り、前日には斜面が硬くエッジが全く立たない状況となるなど波乱を予感させる幕開けとなりました。
 体調が万全であれば硬い斜面は得意とするところですが、さすがに左足首が自在に使えない状況では思った通りの滑りをすることもできません。検定会前日の練習は早々と切り上げて、宿では温泉とストレッチ、ゆる体操で検定会に備えました。また、その日の夕方にはスキー場ゲレンデ前にある岩鞍リゾートホテルへ大雪の降る中、前日受付に行きビブの交付を受けました。そして、その日の夜は理論検定の最終チェックを2時間ほどで済ませ、早めにめに就寝して体調の維持に努めました。

 2月16日午前9時より片品村文化センターで開会式が行なわれ、ここ第3会場では334名の受験者達の3日にわたる指導員検定会が始まりました。
 開会式直後の10時からは理論検定が行なわれました。理論検定の問題用紙が配られ、問題に目を通した瞬間に思わずニヤリとしてしまう自分がいました。記憶に不安のある数問を除き、正答できない問題がほとんど見当たらないのです。正答率60%の関門は楽々クリアできそうです。そして、300文字の小論文を含め解答用紙4枚を30分ほどで埋め終えることができました。
原稿を寄せてくださった水野祐さん ※全種目終了直後
 その後、退出が許可されるまでの残り30分間は故障した左足の冷えとの戦いになりました。理論検定会場となった片品村文化センターは思っていた以上に寒く、朝イチに温泉で温まり十分なウォーミングアップを行なった左足が徐々に浮腫んで硬くなっていきましました。理論検定での途中退出は試験開始後60分から65分までの5分間しか認められていません。そのタイミングまでに回答し終えない場合は試験が終了する11時30分まで会場にいなくてはなりません。30分早く退出することができ、左足を温め直す時間と心に余裕ができました。
 午後1時からは実技検定が開始されました。種目ごとに4ヶ所のコートに分かれ、334人の受験者も4班に編成されて同時進行で実技検定は進行します。ビブナンバー52番、第1班の自分はプルークボーゲン、トップ&テールコントロール・大回り、トップコントロール・中回り、プルークターンのローテションとなります。
 最初の種目のプルークボーゲンでは、自分より先に滑る受験者の多くが斜面設定を考慮に入れたとしても自分がイメージしていた要領よりも横に深く縦に狭いターンスペースでカナリ遅いスピード滑っていまいた。彼らが作ったシュプールに逆らって横は浅く縦に長いスペースで滑るのは非常に勇気のいることです。スタートの直前ギリギリまで迷いましたが、ここは思い切って自分の考えるエッジング操作で滑り、結果として浅いターン弧、速めのスピードとなりました。この最初の種目での決断でイロイロな迷いを吹っ切ることが出来たように思います。
 上々のバーンコンディションの中、2種目めのトップ&テールコントロール・大回りと3種目めのトップコントロール・中回りは無難にこなすことができました。そして、実技検定が始まってほぼ2時間、15時頃にこの日の最後の種目であるプルークターンとなりました。やはりこの種目も自分の前に滑る受験者のターンスペースは横に深く縦に短いものでした。プルークボーゲンで吹っ切れたこともあり、この種目は斜面状況を鑑みた上で堂々と自分が思うエッジングを行ない、他の受験者よりも浅く長いターンスペース、速いスピードとなりました。
 この日の実技検定4種目を終え、各種目をこなす毎に合格に近づいているとの確信が自分の中に湧いてきました。とは言え、午前の理論検定と午後からの実技検定4種目で少々お疲れ気味であることは否めません。明日、不整地・小回りが行われるリーゼンコースを軽く下見して早々にスキー場から退散しました。リーゼンコースのコブは前日同様に硬く凍った上に深いコブとなっていました。しかし、明日のコンディションは明日にならないと判らない!と開き直って、温泉で疲れた身体を癒すことに専念しました。

岩鞍リゾートホテルで行なわれた合格発表の様子
 2月17日、指導員検定2日目になりました。この日は9時30分より実技検定の残り4種目が4ヶ所のコートで始まりました。自分はシュテムターン、トップコントロール・大回り、不整地・小回り、テールコントロール・小回りのローテンションになっています。
 1種目めのシュテムターンは当初に発表されたファミリーコースから国体男子コースにコートが変更されました。国体男子コースは重く湿ったモサモサ雪で荒れており、設定通りの不整地斜面でシュテムターンは行われました。この荒れたモサモサ雪の抵抗に負けてスキーを走らせてしまう他の受験者を横目に、やはりこの種目も自分の考えるコントロールされた等速度の滑りを自分は心掛けました。その後、2種目めのトップコントロール・大回りを無難にこなし、今回の実技検定で最も不安視していた不整地・小回りとなりました。左足の状態が悪くなければ最も得意とする種目のハズです。
 リーゼンコースに設けられた不整地・小回りのコートは予想より短いものでしたが、朝イチに行ったインスペクションでは深く硬いコブが非常に厄介に感じました。そのような状況で選択できるラインは6本ほど、上から見て斜面左脇のラインが比較的浅いように見えました。自分の前に滑った受験者の8割以上がその左脇のラインを選択していました。しかし、自分は右から2番目のラインに妙な魅力を感じていました。コブ自身は大きくて深そうですが、コブのピッチが均等でリズムが作りやすいような気がしたからです。ところが、自分よりも少し前にスタートした有名スキースクールのウエアを着た受験者がこのラインでコケているのを目にしてしまい、正直少し迷いました。しかし、ここは自分を信じて右から2番目のラインを滑りました。
 不安視していた不整地・小回りを無事に切り抜け、テールコントロール・小回りとなりました。コートの状況は上々で良いリズムで滑り降りることができました。今回の検定での好調ぶりを象徴するような滑りだったように思っています。11時過ぎ、実技検定全種目が終了しました。その日の午後は近くの立ち寄り温泉場で検定会の汗と疲れを流しました。

 2月18日、9時より岩鞍リゾートホテル内にある尾瀬の間で合格発表が行われました。主任検定員講評の後、合格者の番号が読み上げられました。自分の番号が近づいてきても妙に落ち着いた状態でいられました。今回の指導員検定会ではかつてないほどに自分自身をコントロールし、思い通りに検定各種目を滑ることができました。
 今回、指導員資格の取得という目標にたどりつくことができました。これもクラブ諸先輩方の御指導やたくさんの方からの御支援の賜物と深く感謝しています。ただ、自分にとって指導員の資格はただの通過点に過ぎません。次の目標に向って今後も研鑚を積んで行かなくてはならないと思っています。

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